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印象的な技術 新潟の教えとゲリラ豪雨の予測技術

先日の新潟と福島の豪雨を伝えるとくダネ!で知った豪雨の予測技術についてブログを書きました。 #prediction #bigdata #innovation #solution

 

 

  新潟と福島の豪雨は大変な被害だった。しかしニュースはすぐに次の出来事へ。大きな事故とありえない事態が立て続けに起きて、通り過ぎていく。特定の地域やそれに関わる方々の痛みに対して、だんだん鈍感になっていくような怖さを感じる。見るべきものを見ず、怒らず動かず、物事に対する感性がバランスを崩していくのはとても恐ろしい。

 そんなことを思いながらテレビを見ていたら、豪雨に関連して印象的な技術があった。ひとつは7年前の豪雨の教訓を生かした新潟県三条市の取り組み。もうひとつは、豪雨からの避難を予測する気象庁のレーダ技術だ。

 

1.新潟三条市の教え

 

7月27日から30日の新潟、福島の豪雨では、40万人もの避難者が出た。降り止まない激しい雨。信濃川下流は6つの水位観測所すべてで過去最高を記録した。新潟県三条市の計測地点では12.64メートル。海のようだ。しかし、幸いにも人的被害は少なく、冠水による被害も最小に押さえられたという。7年前の2004年7月13日、同じ地域で起きた豪雨の教訓が生きたからだ。

そのひとつが新潟県三条市。2004年に大きな被害を出したこの市には、「7.13水害を忘れない」の言葉が街に掲示されているそうだ。その言葉の通り、市と国を挙げた対策が今回の豪雨で大きな成果を上げた。

 三条市の取り組みは大きく3つ。1つは治水を進め、川の水域を下げたこと。今回、整備区域では冠水がゼロだった。2つめは、避難情報の連絡。市は防災無線のスピーカーを170基以上も設置。合わせて、NTTドコモの緊急速報の配信システム「エリアメール」を導入した。多くの人がスピーカーからの放送、ラジオ、携帯のいずれかで避難指示を受け、早めに避難をしている。その結果、避難は100%、死亡者は前回の9人から1人へと大きく低減した。そして、3つめは住民参加の防災訓練の実施。7年前の体験が防災意識を高め、防災訓練が非常時の適切な行動を可能にした。

 

 三条市の取り組みは、災害にどう向かうべきかを教えてくれる“生きた教科書”だ。シンプルだけれど、すべきことを徹底しておこなう。①災害に強い基礎をつくること、②万一の災害時には個々人が主体的に適切な避難ができるように指示と情報提供をおこなうこと、③平時から災害に備えた訓練を実施しおくこと、そして④それを通して、全体としての防災意識を高め共有すること。この教えは、もちろん自然災害に限らない。企業ITの障害対策にも、BCPにも通じる。十分な備えとそれを超えた事態に被害を最小化するための動き。一人一人が主体的に動くための情報と訓練、意識付け。

 

この基礎を考えていると、どうしても放射能汚染に思いが巡る。なぜこれほどまでに後手に及ぶのか。4つの基礎をすべて踏み外した今、すべきことは被害の拡大を少しでも小さくするための除染と測定であると容易にわかる。しかし、今もって機動的に動くことができない。原発の是非ややらせメールの話などしている時ではないと憤りがわいてくる。せめて、なぜもっと整理した話と行動ができないのだろうか?シンプルで当然のことほど、難しいということだろうか。現実がどれほど複雑で難しくても、成果を出すか、プランを説明し納得を得るか、そうでなければ基礎を徹底して守るということだと痛感する。ここにも教訓がある。原発や被災地のことを軽々に引くことは不謹慎に過ぎるが、それでもなお、書かずにいられなかった。

 

2.ゲリラ豪雨を探知するミリ波レーダ

 

新潟県三条市の取り組みでは、豪雨を予測、分析するデータ技術が重要な働きをしている。大量のデータを処理するパターン分析やシミュレーションの技術とそれを支えるハードウェア技術の進化によって、最近、気象情報の世界は飛躍的に前進していると聞いたことがある。スーパーコンピュータの用途でも常に、気象情報があげられる。それに衛星やレーダなどの観測側の技術が組み合わさって、高い精度の予想がおこなわれている。

さらに現在、局所的な豪雨(ゲリラ豪雨)の予測に、広域の気象予報とは異なる特殊な技術の開発が進んでいる。三条市の取り組みを報じるテレビ番組で、この技術を合わせて紹介していた(フジテレビ とくダネ!81日)。

その方式が「マルチパラメータ・レーダ(MPレーダ)による降雨量推定手法」。ゲリラ豪雨が来ることを、レーダで雲の中の雨粒を探知することで予測する。独立法人の防災科学技術研究所が開発した。XバンドMPレーダを使った局地的な豪雨の監視と予測の技術だ。防災科学技術研究所のWebページには、この技術を使って、20088月に東京都豊島区雑司が谷で豪雨災害が生じた際、MPレーダによって、従来レーダでは困難だった局地的な豪雨を捉えることに成功したことが紹介されている。現在、国土交通省によって、全国26機のMP レーダネットワークが配備され、試験運用が行われているという。

 

ゲリラ豪雨を探知する技術というだけでも驚いたが、さらに技術開発は進んでいた。今のMPレーダでは雲の中の雨粒を探知するため、直前にならなければ豪雨を予測することができない。そこで、レーダの感度を上げた「ミリ波レーダ」によって、従来のレーダでは映らなかった雲の中の細かい水分を感知。何と、豪雨が来る30分前に予測をすることができるという。30分の余裕があれば、その間に農作物を保護や交通を待避するなど、相当の手が打てる。番組でこの技術を紹介した気象予報士は、「30分前に予測できれば、もはやゲリラ豪雨ではない。ふつうの大雨だ」と言っていた。まさに、驚きの技術だ。

このミリ波レーダの技術は5年後の実用化を目指している。コンピュータのデータ処理技術とレーダの探知技術の進化が組み合わさって、自然災害による被害を最小に押さえる予測情報がつくられる。予測があれば、人が動くことができる。人が動けば、災害に備えられる。地震、津波、そして豪雨。ITの進化が社会と自然との共存を進めてくれる。

日本では今、50ミリ以上の降雨が急増しているそうだ。いわゆる「亜熱帯化」だ。豪雨の危険は高まっていく。農作物が被害を受ける危険が増えてくる。豪雨予測は一層重要になる。そして、この情報を連携した新しいソリューションへと広がっていく。

 

  1. satoekuwaharajp posted this